組織のミカタ

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ローレンス佐藤のオフィシャルブログ

ビジョン策定プロジェクトへの参画

昨年の終わり頃、某企業様の「事業本部ビジョン」策定プロジェクトに関わらせて頂きました。
その事業本部は、3つのかなり独立性の高い部をまとめてひとつの事業本部として編成されたもので、事業本部全体としての一体感や方向性がなかなか見出しにくい状況にありました。そこで、事業本部長の指示により、若手社員数名による「ビジョン策定プロジェクトチーム」が組成され、1年がかりのプロジェクトが動きだしました。テーマは「実感ある自分たちの事業本部のビジョンをつくる」というものです。プロジェクトチームは、新入社員から入社10年未満の若手6名で、中途入社の方もいらっしゃいました。

私は、そのプロジェクトの1フェーズの中で、ビジョンに盛り込むべき重要な要素(キーワード)を事業本部のメンバー自身から引き出す、という目的においてLSPワークショップをご提供しました。内容は、メンバー各自が自分の仕事の「提供価値」について今一度振り返り、また他メンバーはどんな「提供価値」を認識しているのかを理解した上で、事業本部としてどんな「理想像」 を描いていけるかを考えて頂くようなプログラムを設計しました。あえて「自分の仕事の提供価値」からスタートしたのは、「実感ある自分たちの事業本部のビジョンをつくる」というプロジェクトの目的に応じて、自分の仕事の先に見えてくる事業本部のビジョンという認識を持って頂く為でした。 プロジェクトチーム側としては、ワークショップのプロセスの中で、ビジョンに反映すべき言葉や考え方を収集することをもうひとつの目的とし、その為にワークショップの各グループには収録用の固定ビデオを設置し、ワークショップの模様(話の内容)をすべて収録しました。

ワークショップを行なってみると、実に様々な課題が見えてきました。
各メンバーの仕事への視座、認識、それぞれの違い。そして「仕事への意識」と「組織への意識」の温度差。さらに、多くの参加者が「事業本部として目指すべきビジョン」の必要性を強く感じていながらも、具体的にどういうものが「ビジョン」足り得るのかと考えると言葉が出てこないという現状、などです。一方で、多くのメンバーが口にする共通のキーワードというのも複数見つかりました。これはつまり、「何を目指す!」という方向で考えると具体的なものは見えにくいけれども、「何が大切か?」については具体的なものが出てきている状況だと私は考えました。そこで、私からは、「これを目指す!」というビジョンではなく、自分たちの可能性や価値を探求していく為に「これが大切」という、ひとりひとりの「姿勢」や「マインド」、つまり「あり方」を目指すべき指針としてビジョンに掲げることをご提案致しました。

ビジョン策定の方法というのは、正直いろいろなやり方があって、唯一の正しいやり方がある訳ではないと思っています。それでも、比較的多くの場合は、組織のトップが「これを目指す!」という形でトップダウンで決めるパターンだと思います。ある意味、それが一番納得感を生みやすい訳です。でも今回のケースは敢えてボトムアップで策定していくという流れだったので、「これを目指す!」という打ち出しはそもそも難しいと感じていました。若手のプロジェクトチームから「これを目指す!」というビジョンが策定されても、心情的に納得感が得られにくく、反発も大きくなるのではないかと思ったからです。一方、メンバーから出てきたキーワードをもとに、「何が大切か」を定義するビジョンであれば、共感を得られやすく、各個人が「実感を持って受け入れられるビジョン」になると考えました。それであれば、事業が大きく異なる部同士でも横断的に掲げられるビジョンになると思ったのです。

今回の私の仕事は、ワークショップを実施し、上記のようなご提言を差し上げるところまででした。その後、プロジェクトチームの皆様は約3ヶ月に渡り、収集したキーワードをもとに、終日缶詰のディスカッションを何度も重ね、ビジョン案を複数作成し、メンバーにアンケートを取り、厳しいフィードバックをもらってさらに精査を重ね、最終的に、見事、素晴らしいビジョンを策定されました。事業本部長からも「いいビジョンだ」とのコメントをもらえたそうです。社外秘なので残念ながらここではご紹介できませんが、私も本当にいいビジョンだと思える素敵なものです。

実は昨日、プロジェクトメンバーの皆様とランチをさせて頂きまして、ワークショップ後、ビジョン策定までの紆余曲折、苦労話などお伺いしました。私としても、プロジェクトがその後どうなったのかは非常に気になっていましたので、最後まで一連のお話を伺うことができて、非常に嬉しく思いました。若手社員が事業本部のビジョンを策定するというのは本当に大変な作業だったと思いますが、それを完遂されたプロジェクトチームの皆様は本当に素晴らしいと思います。また、そこに参画させて頂いたことを誇りに思います。とかく、ワークショップというのはピンポイントでお客様に関わるケースが多く、プロジェクトの最後まで見届けさせて頂いたり、情報を共有させて頂くということが少なくもあるのですが、今回は完結するところまで共有させて頂いて、かつそれが成功裏に終わったことが分かり、本当に嬉しいことでした。私自身、ワークショップを実施して得た情報や知見からアドバイス差し上げられることが非常に多く、コンサルタント的な立ち位置でその後のフォローをさせて頂けることの可能性を認識致しました。これからも、多くの志あるプロジェクトに協力していきたいと思います。

ライフ・ブレークスルー・ジャパン株式会社
ローレンス佐藤
http://life-btj.com/